「マイケル・ジャクソン ライフ・オブ・アイコン 想い出をあつめて」をまとめたのはマイケルの少年時代からの友人、デヴィッド・ゲスト。
彼は2001年9月にニューヨークで行われたマイケルの「ソロ30周年コンサート」を取り仕切った人物です。この時、十数年ぶりにジャクソン兄弟6人をステージに勢揃いさせ、栄光の「ザ・ジャクソンズ」を再結成させたのはマイケルとデヴィッドの信頼関係があってのことでした。
このドキュメンタリーで僕が驚いたのは、マイケル没後にリリースされたアルバム「MICHAEL」に収録された「未発表新曲」数曲をマイケルと共作していた人物、フランク・カシオが登場することです。フランク、エディ兄弟を中心とするカシオ家とマイケルは、80年代から亡くなる寸前まで家族ぐるみの付き合いをしていました。しかし、カシオ家地下のスタジオでマイケルが中心となって制作したというそれらのデモ音源が「本当にマイケルの声なのか?」という疑問が、母親キャサリンも含むジャクソン家と一部のファンの中から一時起こり、ネットでも話題になりました。その一件でジャクソン家とフランクを含むカシオ家とは対立関係にあるとされていたのです。
しかし、キャサリンも深く関与したこの作品にフランク・カシオが登場する現実をみる限り誤解は解けたようですね。
フランク・カシオの語るエピソードも実際にマイケルに「忠告」をすることのできる立場にいた友人ならではのもの。「ソロ30周年コンサート」で少しフラフラしているように見えたマイケルの姿、その裏側で起こっていたエピソードなどは、その時期のマイケルの置かれた精神・身体の状態がわかる貴重なものです。
彼に限らず、家族も、友人達もこの作品ではただ「マイケルは凄い」「素晴らしい」と褒め讃えるだけでなく、愛に溢れながらも率直な表現で「想い出」を語っており、時折ドキッとする証言もあることが、「人間マイケル」のリアリティを感じさせてくれて個人的には嬉しかったです。
豪華なゲスト陣がインタヴューに答える中で、注目してもらいたいのはマイケルのキャリアのキー・パーソンとなった最初期のプロデューサー、ボビー・テイラーの登場。彼はインディアナ州ゲイリーでジャクソン兄弟が活動していた時代に、実際に兄弟の才能を見抜き「発掘・育成」した恩人で、マイケルの唱法にも大きな影響を与えた存在です。
そして、忘れてはならないのが80年代のマイケルの快進撃を支えた名物マネージャー、フランク・ディレオのインタヴュー。まるでマイケルの後を追うように、今夏、亡くなってしまった彼が痛切なマイケルへの愛情・想いを語るシーンには、胸が熱くなりました。
マイケル・ジャクソンの本当に親しい友人、ファミリー、関係者がマイケルについて語った証言をていねいに編纂した注目のドキュメンタリー。母キャサリンと兄ティト、姉リビーの愛にあふれる思い出。マイケルの伝記作家Jランディ・タラボレリ、マイケルの幼少からの親友デイヴィッド・ゲスト、1980年代に入ってから家族ぐるみのつきあいを始めたフランク・カシオ、元マネージャー、フランク・ディレオなどの証言は近い関係者だからこそ語れる貴重なもの。マイケルの人となりに触れられる超重量級の映像だ。